米国イリノイ州で電動自転車の規制整備が大きく前進している。州議会が承認した新法案は、速度区分の明確化と走行エリアの制限を柱とし、急増するe-bike利用者と歩行者の安全な共存を目指す。通勤・配送・レジャーで普及が進む一方、自治体ごとの規制の違いが新たな課題として浮上している。
参考: 米国でe-bike関連の規制強化が進行(Facebook/My Eyewitness News)
分析・見解
e-bikeが「実験段階」から「制度化段階」へ、シカゴでは配送の3割が導入
イリノイ州の動きは、マイクロモビリティ(=小型の移動手段)が「実験段階」から「制度化段階」へ移行した証左だ。2020年以降、米国の主要都市でe-bike販売台数は年平均40%超の成長を続け、特にシカゴでは配送業界の3割がe-bikeを導入している。この急速な普及が、今回の規制強化の直接的な引き金となった。
走行速度で3段階に分けるクラス分類システムが米国流の現実解
注目すべきは、イリノイ州が採用した「クラス分類システム」の精緻化だ。最高速度20mph以下のクラス1、スロットル付きのクラス2、28mphまでのクラス3という三段階区分は、カリフォルニア州の先行事例を参考にしつつ、走行可能エリアを車道・自転車道・歩道で細分化している。これは欧州の「25km/h制限」とは異なり、米国特有の広域都市構造と自動車優位の道路環境を反映した現実解といえる。
ニューヨークでの歩道事故急増を踏まえ、クラス3の歩道走行を全面禁止
規制の核心は「共存の作法」の明文化にある。ニューヨーク市では2023年、e-bike関連の死傷事故が前年比65%増加し、そのうち7割が歩道での衝突だった。イリノイ州はこの教訓を踏まえ、クラス3車両の歩道走行を全面禁止し、違反者への罰金制度を導入する。単なる速度制限ではなく、空間の棲み分けによる安全確保が狙いだ。
州法と自治体条例の二層構造が生む柔軟性と利用者の混乱リスク
自治体ごとの規制差も見逃せない論点だ。シカゴ市は州法より厳格な駐輪ルールを設け、エバンストン市は学校周辺での速度制限を独自に定める。この「州法+自治体条例」の二層構造は、地域特性に応じた柔軟な運用を可能にする反面、利用者の混乱を招くリスクもはらむ。今後は、統一的な標識システムやアプリ連動型の情報提供が不可欠になるだろう。
ビジネスへの影響
歩道走行禁止で配送業務は再設計を迫られ、所要時間は平均15%増の試算
配送・物流業界にとって、この規制は業務設計の再考を迫る。クラス3車両が歩道を使えなくなれば、ラストワンマイル配送(=家庭や店舗までの最終区間の配送)の所要時間は平均15%延びるとの試算もある。一方で、規制遵守を前提とした専用レーンの整備や、e-bike車両群の最適な配置を計算する仕組みの開発は新たな商機を生む。
日本企業は州ごとの規制マップ作成と自治体との早期対話が参入の鍵
日本企業が米国市場へ参入する際は、州ごとの規制マップの作成と、現地自治体との早期対話が成否を分けるだろう。都市計画コンサルタントや移動サービスの統合事業者(MaaS事業者)にとっては、イリノイモデルを参考にした日本版規制提言の好機でもある。自治体のデジタル化の文脈で、リアルタイム速度監視や違反検知システムの需要も高まる見込みだ。